当店は、お客様が家でいかに美味しくコーヒーを飲んでいただけるのかを、いつも考えております。
抽出方法は、ペーパーフィルターを使ったハンドドリップを勧めておりますが、
お客様全員にハンドドリップが合うわけではないと思います。
コーヒーを飲むシーンは、朝が多いはずです。
皆さん、朝は身支度や準備で忙しく、常に時計を見ながら分刻みで動いているのではないでしょうか。
洗面台の取り合い
靴下の片方が見つからないアクシデント
お子さんの寝坊…
「そんな忙しい朝でも、1杯の美味しいコーヒーを飲みたい」
現実の生活から考えると、準備と同時進行ができるコーヒーメーカーが便利なのかもしれません。
当店は、そんな皆様の私生活をイメージをしながら
どんなコーヒーメーカーをお勧めできるのか、色々と探しておりました。
しかし、探しても探しても、自信をもってご提案できるものが見つかりません。
そのネックになっていることが、抽出時間です。
主にコーヒーメーカーは、ドリップ式です。
ドリップ式を原理で説明する際は、透過法と言い換えます。
透過法とは、水がほぼ一定の速さで粉の隙間を通過し、味の成分が粉から水へ移動しながら、コーヒーの液体が下に溜まっていくこと。
コーヒーメーカーは粉の層を壊さないように、ゆっくりとお湯が落ちて抽出しますが、時間がかかってしまうという現実があります。
当店の経験によると、ドリップで際立った風味を抽出するには、
1~2杯分なら2分から2分30秒以内、3杯分以上なら3分以内で落としきることが理想です。
ハンドドリップは、そのあたりを自分で調整できることが利点です。
コーヒーメーカーですと、どうしても4分以上はかかってしまうことが多いのです。
甘みのあるコーヒーに仕上がるとは思いますが、口から喉全体で感じる「キラッ」とした風味はきっと隠れたままだと思います。
風味が隠れたままといいますか、過ぎ去ってしまい、戻ってこないのです。
あの頃の、腹筋の割れていた旦那様と同じように。
当店のコンセプトは「格別な家飲みの普及」。
コーヒーメーカーしかり、コーヒーミルしかり、それなりの働きをするなら何でも売っていいものかと考えたら、
胸を張ってお勧めできないなと思いました。
悩んだあげく、コーヒーメーカーという縛りをなくし、朝の準備と同時進行ができる抽出器具を考えたところ
フレンチプレスが1番納得できました。
フレンチプレスの抽出にかける時間は4分。
今の話と言っていることが違うと思うかもしれませんが、フレンチプレスは浸漬(しんし)法という原理で抽出します。
いたって単純で、熱湯のなかにコーヒーの粉を浸けるのみです。
ドリップのように、粉の層をつくって徐々にお湯を通過させるのではなく、
粉全体を浸すだけでしっかりと味を抽出するには、4分は必要だということです。
店内メニューでお出ししている「コーヒー飲み比べ」では
このフレンチプレスで抽出しておりますが、風味はしっかりと感じると思います。
熱湯にコーヒーの粉を浸けるだけですので、電気もいりません。
(電気は性質上、熱を発生させる働きの場合、消費量が大きいですから、年間でみると節電にもなります)
もちろん、この先もコーヒーメーカーを探し続けますが
当分のあいだは、皆様の生活スタイルや味の好みに合わせて、ハンドドリップとフレンチプレスの二つを
「格別な家飲み」の手段として、お勧めしたいと思います。
「迷ったらコンセプトと照らし合わせて判断する」
今回はこれに気づかされました。
次回は、フレンチプレスの特徴について簡単にお話します。
Lover’s Coffee