コーヒーのこと

素材のこと② 

 

スペシャルティコーヒーが一般的に浸透し始め、コーヒーの概念がガラッと変わりました。スペシャルティコーヒーには定義文もあるのですが、どんなコーヒーなのか簡単にお答えするならば、どこの誰がどんな方法で栽培、精製しているかが明確であり、純粋に味覚評価で選び抜かれたコーヒーといえます。量より質。それと対極にあるものがコマーシャルコーヒーといわれるコーヒーです。ニューヨークやロンドンの先物取引で価格が決まり、国名や「モカ」といった大まかなブランド名で販売され、これらは味覚評価というよりは、収穫された土地の標高や粒の大きさ、欠点豆の多寡などによりグレード分けされます。質より量。

写真は真空パックされたスペシャルティコーヒーの生豆

初めて当店にご来店された方は、喫茶店の全盛期に馴染みがあったブルマンやハワイコナ、モカ、キリマンジャロといった商品名が当店には無く、戸惑ったのではないかと思います。別な意味でも、当店のPOPの見せ方は、分かりにくく納得いくものではありません。馴染みがないコーヒー豆だとしても、道の駅で販売している野菜や果物のように、農家さんの顔や風景が分かり、より想像力が湧くPOPにすることが理想であり、当店の課題です。これはゆくゆくの課題として置いといて、スペシャルティコーヒーという概念が生まれたことで、零細農家さんのコーヒー豆でも、風味が素晴らしいものであれば、高値で取引されるという、生産者と消費者の双方が笑顔になる仕組みが出来上がったのです。

 

スペシャルティコーヒーの味覚評価で1番大事な項目が、風味特性(フレーバー)です。コーヒー豆が育った土地の環境や農家さんの意図がコーヒー豆の風味特性として表現されているかが重要となります。私が書くPOPには「オレンジのような」とか「ミルクチョコのような」など、一見「本当かよ!」と疑いたくなるような単語があります。その繊細な風味は、ピンポイントを狙うローストによって引き出されるということ、これが今回最もお伝えしたいことです。ローストによって風味が引き出された素材と、後々ご紹介予定の優秀なコーヒーミルやポイントを押さえた淹れ方によって、繊細な風味は実感できるようになるのです。

 

ローストによってコーヒー豆の持ち味を引き出すには、LPガスの火力を上手に扱うことや、高い排気能力を維持することなど、いくつもの細かいポイントがあります。すべてお話しすると明日になってしまうので割愛しますが、その中でも1番のポイントは、どの地点でローストを止めるかということです。私は、その最適な地点を「ベストポイント」と呼んでいます。スペシャルティコーヒーの場合、ローストを止める地点がワンテンポずれるだけで味は変化していきます。ということは、いくつもの地点でローストを止めるといった作業と、テイスティングを繰り返さなければなりません。意図的な失敗を繰り返さなければ、ベストポイントは見つからないのです。

 

 

自分が「ここだ!」と判断したベストポイントの検討がつけば、あとは詰めとして、そのベストポイントに持っていくまで、どんなタイミングで火力を上下させるかを探っていきます。実はその火力によっても味は変わります。ようやくそのコーヒー豆のローストパターンが確立されれば、あとは毎回同様に再現できて、初めて商売になります。本当に納得したローストに仕上がったときは、コーヒー豆が「ボクたち美味しいよ」と語りかけてくれます。この声が聞こえたものなら、もう頭が狂った証拠。女子にこの話はしません。

 

 

なぜ、スペシャルティコーヒーを扱うお店は、写真のような焙煎機を使うのか。

 

 

なぜ、この写真のような小窓からコーヒー豆を抜き差しして、ローストの進行を何回も何回もチェックするのか。すべて理由があります。

 

緑色をした生豆から皆さんが目にする茶色のコーヒー豆へと変化するまで、いくつもの意図が含まれております。グダグダ説明しましたが、商品化されるまでには、ドラマの回想シーンのようなストーリーが存在するのです。期待や悔しさ、喜び、感動といった回想シーンはローストしている私にしか分からないため、せめて一部分だけでもと、今回記事に致しました。アツ苦しい想いが詰まったもの、それがLover’sCoffeのコーヒー豆です。抽出に関しては、皆様が自宅で美味しく淹れられるように、これからゆっくりとノウハウを公開していきます。そのノウハウを含め、新鮮で且つ、持ち味が引き出されたコーヒー豆のご提供。ここまではどうか、当店にお任せくださいませ。

 

素材のことはこの辺まで。それでは、おやすみなさい。

 

 

Lover’s Coffee

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