当店は豆売りのお店と謳っておりますが、試飲とは別に、コーヒーを飲める席がございます。オープン当初はカウンター席を含めて7名ほど座れましたが、現在はソファ席4名分まで縮小しております。当店はなぜこのようなちょっとした席を設けているのでしょうか。それは、この商売を始める前から「誰かを誘わないと入りづらいオシャレカフェ」ではなく、「老若男女問わず一人で気兼ねなく入れるお店」を作りたかったから。穂積語録を付け加えると、視・嗅・聴・触・味覚のいわゆる五感が満たされる、五感がホッとする、そんな空間に短時間でもいいから一人で浸れる空間を提供したかったからです。
私は、心に何も抱えていない人は一人もいないと思います。きっと、皆それぞれが理想と現実のギャップを受け入れながらも、今を懸命に生きているはずです。そんな頑張り屋さんたちへ、家と職場を往復する生活の中に、ちょっとした癒しやささやかなエールを感じる時間、空間を提供したかったのです。ラバーズコーヒーが誕生する以前、20代だった経験の浅い若者はそう考えていたのでした。
オープンして2年4カ月が経ち、お陰さまで来店客数は伸びつつあります。ところが、最近現場がスムーズに回らない時間が出てきました。簡単に言うと、キャパシティオーバー。多くのお客様に来店して頂けることは、とてもありがたいことです。しかし、客観的に見てしまうと、豆をお求めの方への接客の他にドリンクメニューも提供するサービス内容と、当店のサイズ感が明らかに合わなくなってきた様子。沢山のスタッフがいる大きなお店ならできる内容を、ミニマムなお店が実施していること、そこが問題です。
様々なニーズに合わせて幅広く対応することは大事だと思いますが、お店側が八方美人になることで、お客様をお待たせすることも事実。これから長くお店を続けるために、「しないことを決める」必要性がでてきました。まだ決めかねてはおりますが、メスを入れる箇所は、試飲サービスとは別の、ドリンク提供の部分です。白か黒!ではなくて、グレーな感じで折り合いをつけようと考えております。
何かをやめることでお客様が離れてしまうのか、それとも、あえてとんがることで好転するのか。長い目で見ないと正解は分かりませんが、勇気をもって決断しようと思います。
Lover’s Coffee