私はナチュラル精製のコーヒー豆を好んで入手しております。コーヒー農家さんが担う、このナチュラル精製とは、摘み取りした真っ赤なコーヒーチェリーをコンクリート製の地べたに敷き詰め、天日に干して発酵させるもの。数日後、規定の水分値まで下がったら脱穀し、コーヒー生豆となります。
この方法の長所は、果肉が付いたまま天日干しすることにより、種(生豆)まで果肉の甘さがゆっくりと浸透していくこと。独特の香りは「ナチュラル香」とも言われており、赤い果実を連想させる風味は多くのコーヒーファンを虜にしています。一方で短所は、発酵の進み過ぎにより、嫌な発酵臭がついてしまうこと。その為、発酵のコントロールに長けた生産者さんの豆を入手することがとても重要なのです。
今回、2022年の濃縮ボトル(カフェオレの素)を作製するにあたって、私はこのナチュラル精製を多用したブレンドに挑戦しました。深めの焙煎豆2種類と、産地の異なるナチュラル精製の焙煎豆2種類を配合した、個性豊かな採算度外視のブレンドです。「牛乳に合わせるための苦さ重視のブレンド」ではありきたりになってしまうため、果実味を思い切って加えようと試みました。正直、今年のロットは出来上がりに怖さがありました。なにせ、果実味というクセを加えたブレンドが濃い液体となることで、1ロット360本がすべて吉となるか、凶となるか、わからなかったからです。
40キロの焙煎豆を大阪にある充填加工専門の「中村商店」様へ納め、出来上がりを待つことに。納めたあとも、私の心配は決して消えませんでした。
数日後、濃縮ボトルが完成されて届きました。私は、半分白目の状態で恐る恐る原液をテイスティングしたところ、肩の力はスッと抜けました。その液体は意図した通りで、重たいベリーが凝縮された、そんなクセを表現できたのです。次に牛乳と合わせてみると、カフェオレというより、まるでスイートチョコレートの液体を飲んでいるかのような風味に変わりました。
とりあえず、今年もホッとしました。ぜひ、皆様もこれからの暑い季節、当店の濃縮ボトルを試されてみてください。今のところ、8月のお盆前には確実に無くなってしまうペースで在庫が動いておりますので、お早めにどうぞ。
Lover’s Coffee