いらっしゃいませ。10月のお休みは通常通り、毎週水曜と木曜になります。営業時間:10:00~18:30。宜しくお願い致します。
「士業ではない」
私がこの仕事に就いている上で、呼ばれて恥ずかしく思う呼び名があります。それは、「コーヒー焙煎士」という造語です。今回は、100%個人的見解を申し上げます。
お客様の中には、「士」の称号を得て手に職を就けるために、難しい資格試験を受けようとしている方、もしくは、すでにその資格試験に合格し専門の業務を全うしている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。資格試験に合格するには決して容易ではなく、実務経験も必要な資格もあるほどですから、試験に突破した方はきっと苦労を掛けて勝ち取ったことだと察します。
勉強に集中するため、お酒や趣味を制限した方もいれば、ストレスで円形脱毛症にもなって、勉強と実務を両立したという方も知っています。そこまでして試験を突破した方々を私はとても尊敬しています。士業とは、集客できるかどうかは別として、どこに拠点を置いても活かせる称号ではないでしょうか。
そんな数々の「士」を名乗る専門職に対し、町のコーヒー屋はどうでしょうか。コーヒー豆を焙煎するには特別な資格など必要ありませんし、道具と環境さえ整えれば、誰でもすぐに商売ができます。道具に関して言えば、当店が扱うような完全マニュアル式の焙煎機もあれば、タッチパネルで焙煎過程を自動操作できる高価な焙煎機もあります。(私はどんな操作にも意図を込めて操作したい)。他には、自動の完全熱風式、そして手廻し焙煎機…。コーヒー屋の仕事は、お客様と契約書を交わす仕事でもありませんし、何をもってプロであるのか、その定義が曖昧であると言えます。
たしかに、コーヒー屋は皆それぞれ自分の仕事に誇りを持って従事していると思います。私もこの仕事1本で生きています。ただ言えることは、前述のように苦労して資格試験を突破した士業に従事する方々と、「コーヒー焙煎士」という造語は、決して同列に並べてはいけないということです。だから、少なくても私だけは、コーヒー焙煎士と呼ばないよう、どうかお願い申し上げます。「バリスタ」とも呼ばないでください。この件に関しては、全国のコーヒー屋を敵に回すので割愛します。
ならば、私は何と呼ばれたいのでしょうか。1番はひねりもなく名前で呼ばれたいのですが、「コーヒー屋のアンちゃん」、歳を重ねたら「コーヒー屋のオンちゃん」、そんなんでもいいんです。
私の仕事の長所は、ターゲットを絞れること。公の仕事や大型のお店は、どんな方でも平等に受け入れなければならないことに対して、当店の場合は、ウチのお店の感覚に響いた方々しか来店されません。だから、私に「士」の称号がなくても、私の大好きなお客様に対して、本質的な欲求を満たすことに全力を尽くせばいいわけです。
お客様の目も舌も肥えた、まさに成熟化し、多様化した現代。私はそんな現代を生き抜く商人でありたいと思います。
Lover’s Coffee