毎年秋になると、中米のコーヒー豆を扱うロースターは、焙煎に苦戦すると思う。そうは言っても、私だけかもしれないが。
その訳は、去年と同じ銘柄の豆を仕入れたとしても、収穫年度が違えば、それは全く別物といっても過言ではないから。今年のその土地の雨量や気温、それから生産者の細かい栽培工程の変化など、去年と全く同じ環境で生豆が仕上がるわけではない。
安易に、去年産と同じ過程で火力を操作し焙煎度も同一に仕上げると、大抵、ベストの風味ではない。この時点でロースターが勝手にその年の出来を評価してしまうと、試合はそこで終了。ロースターが生豆を評価しているようで、生豆が逆にこっち側を試していることに気づかないのである。
新豆でまず悩んだのは、ニカラグアの「ママミナ農園」だ。去年は中深煎りで質感の滑らかさを強調した。ところが、試行錯誤を繰り返していくと、今年度は果実のニュアンスを多く感じたため、煎り具合を少し浅めに変更。浅煎りでは酸味が目立ち過ぎるため、この豆特有の滑らかさは残しつつも、熟した果実の甘さを加味させるよう、中煎りのある一点に焙煎度を絞り込んだ。
今年のママミナは、また素晴らしい。飲み始めは、ヘーゼルナッツを思わせ、冷めていくごとに完熟果実やシロップの甘さを感じる。この豆をあきらめなくて本当に良かった。
これからもずっと、私はコーヒーに試され続ける。
Lover’s Coffee