当店のコーヒー豆のメニューに目を通すと、「チョコレートのような」あるいは、「黒糖のような」、「完熟果実のような」といった連想させる言葉を使用しながら、コーヒーの甘さについて説明をしております。
とは言っても、砂糖が入っているわけでもないのにコーヒーに甘さを感じるなんて、皆さんは不思議に感じたことはありませんか。実際、その疑問は正しくて、コーヒー生豆に含まれるショ糖は、焙煎が進むにつれてほとんど存在しなくなります。では、ラバーズコーヒーはペテン師なのかというと、おそらく違うと思いますが、店主の私はコーヒーの甘さについて、ある仮説を立てております。それは、コーヒー生豆に含まれる良質な酸味が、焙煎によって甘さのようなものに変質されたものであるということ。(ホントは知らんけど)
生豆に含まれているクロロゲン酸やクエン酸、リンゴ酸は、浅~中煎りを境に減少していき、コーヒー豆内部の成分は、煎り止めに至るまで目まぐるしい変化を辿ります。正直、その変化についてはよく分からないのですが、私の経験として、両極端である浅煎りと深煎りには甘さが少ないように感じてしまうのです。イメージとしては、浅煎りでは酸味が、深煎りでは苦味がそれぞれ顔を出し過ぎており、甘みの出る幕が無くなってしまう。結果、私はコーヒーに対して甘さを重視する関係上、メニューは自然と中煎りや中深煎りがほとんどを占め、深煎りにはせず、浅煎りが1~2割といったメニューの分布となっているのです。
ここからコーヒーの甘さについての補足説明として、オリジナルブレンド「チョコラティ」についてご紹介します。このブレンドは、当店のメニューの中で最も甘さに焦点を当てた商品です。このブレンドには以下の4つのスペシャルティコーヒーが配合されております。
この4種はすべて中深煎りに仕上げておりますが、実は、どの豆も本来は良質な酸を豊富に含んでいます。どの豆についても、浅めの焙煎度は十分美味しい。しかし、なぜ、あえて中深煎りにするのかというと、私が経験する限り、各々の豆の華やかさよりも甘さに焦点を当てた煎り止めのベストポイントは、中深煎りに集中しており、同一の豆の浅い焙煎度と比較すると、断然魅力的であったからです。ここで大事なことは、各々の豆に対して、浅~深煎りまでの焙煎度を試して、根気強くベストポイントを探っているかどうかということ。この4種は微差ではありますが、中深煎りの範囲内において、煎り止めポイントがそれぞれ定められており、甘さのニュアンスは微妙に異なります。
この4種は、チョコレートを連想させる甘さが共通項として存在するため、ブレンドしても風味がケンカするわけでもなく、複雑さといった長所を伴って商品化されるのです。
甘さのようなもの。それは、スペシャルティコーヒーが町の小さな焙煎所に可愛がられて、副産物として浮かび上がったものです。甘さを引き出す抽出温度は、中煎りなら90~93℃、中深煎りなら88℃付近。冷めてから、あるいは冷めきってから甘さを感じるはずです。是非、これらを頭の片隅に置きつつお楽しみくださいませ。
※ブレンド「チョコラティ」の販売は4月29日まで
Lover’s Coffee