いらっしゃいませ。
9月のお休みは毎週水曜と木曜、そして、8日(火)を夏休みと致します。お間違いのないよう、ご来店くださいませ。
「N」
当店へ通って下さる常連のお客様へ。皆さま、時間に限りがある中、わざわざ当店へ足を運んで下さり、誠にありがとうございます。皆さまにお聞きしたいことがございます。もし当店にコーヒー豆の配達サービスがあったら、ご利用されたいでしょうか。お店に行かなくても商品が手に入るなんて、とても便利なサービスですよね。しかし、お聞きしておいて先に結論を申し上げますと、その仕組み自体を作ることが難しいため、今の段階ではとても不可能に近いサービスです。
もちろん、「その余裕がないから」というのが半分以上を占める理由なのですが、わざわざ当店へ足を運んで頂きたい理由が他にあります。それは、当店へ来店されて家に帰るまでの行為が「ラバーズコーヒーで豆を買う」という商品パッケージだと感じて頂きたいのです。遠足の日に言われることと似ていますね。
当店ではカフェ利用ができない代わりに、遠慮なく試飲のコーヒーを1種類飲むことができます。おそらく、目の前の店員は皆さまのために、1杯ずつ丁寧にドリップコーヒーを淹れるはずです。もしくは、あらかじめ時間をかけて抽出した水出しアイスコーヒーをもったいぶんなくお出しするはずです。普通、試飲サービスというのは、ポットに入れてあるコーヒーを一口程度お出しする形でしょう。無料のサービスなのですから。それが正常なコーヒー豆屋の考え方です。
私たちは、やせ我慢して試飲サービスを行っているわけではありません。お客様はわざわざ当店へ足を運んで、押すのだか引くのだか分からないドアを開ける。まず、ドアを開けてすぐにコーヒーの香りを感じ、嗅覚を満たす。家庭にはない焙煎機など、コーヒーを中心とした内装を眺める(視覚)。「癒しの曲」を中心に選択したBGMを聞いて、聴覚を満たす。カップやカウンターの手触り、そして、左官壁の調湿効果による澄んだ空気感を肌で感じ、触覚を満たす。ときどき店主を触る。そして、順番として1番最後に、丁寧に淹れられた試飲のコーヒーで味覚を満たす。おまけに、そのコーヒーの長く続く甘い余韻を帰りの道中で感じることができればコンプリート。
これを店主は「五感を満たす」と勝手に言葉を作りました。五感が満たされた中でコーヒー豆の買い物をする、この行為自体を生活に取り入れてみてください。この行為自体は、お客様の精神状態を一度ニュートラルにすることだと、私は考えております。前進も後退もしない、そう、車のギアでいう「N」です。私もそうなのですが、皆さま、普段から交感神経を働かせ過ぎだと思うんです。ハードワークの上司、そして部下。家族に献身的な嫁、婿。会社では仕事、家では家事、育児、介護。例を挙げたらきりがありません。とにかく神経を使う現代人に必要なことは、この「N」だと思っています。だから、意識的に心をNへギアチェンジしてください。
私の今後の理想は、更に五感を満たす要素を上げ、癒しの空間を更新し続けること。また、商品棚の拡大や、コーヒー教室の復活、新ジャンルのエスプレッソを導入し、ラバーズコーヒーでの体験レベルを上げること。この体験自体を商品として捉えて頂き、あくまでコーヒー豆はお土産のような存在にすることです。
だから、今のラバーズコーヒーの状態は、本当に道半ばです。ゆっくり更新し続けたいと考えております。その日その日のラバーズコーヒーで体験できる「N」を、お客様なりに感じて頂けたら私は嬉しいです。
Lover’s Coffee