本日は私の愛機である焙煎機のメンテナンス。
皆様は当店に対してこう思っていることでしょう。「小売店が毎週2日も休みやがって」と。私も逆の立場だったら、そう思います。でも、これには理由があります。焙煎機というものは、毎日稼働させると、すぐに生豆のカスや油成分が機械のあちこちに溜まっていきます。これを放置していくと、排気の抜けが悪くなり、コーヒーの味にも影響するし、部品も故障します。最悪の場合引火することも。当店の場合、一日に平均8種類ほどを焙煎、それを週に5日続けるならば、40回分のカスがあっという間に蓄積します。自分がコーヒーロースターとして生きてゆくと選択したならば、必ず週に1回はまとまった時間をメンテナンスに費やすことになります。想像以上の地味な作業をこなすには、「好きなことを仕事にしたならば」という気持ちを根底に置かなければ続かないものです。
当店の開業初期をご存じのお客様は、以前、カフェ利用もできたことに懐かしく思うことでしょう。開業する10年前から、私はエスプレッソマシンが活躍する店を開くことが一つの夢でした。もちろん、焙煎もテイクアウトもコーヒー教室もこなして。
しかし、2年ほど経つと、経験が浅い店主は現実に苦戦することとなります。焙煎の数は現在より少なくとも、冒頭の焙煎機のメンテナンススケジュールについていこうと思えば、カフェのメニューや資材の準備、エスプレッソドリンクの練習、経理、掃除、その他挙げたらきりがない仕事が私にのしかかりました。休みが今より少ない当時、私は身も心もボロボロでした。何より、焙煎もエスプレッソも腰を据えて何一つ極めていない自分が許せませんでした。
それから私は豆売りの需要が7割以上に変化したことをきっかけに、これからの方向性を、思いきって豆売り専門とすることに決めました。まだまだ自分の理想の形には程遠いですが、以前よりもコーヒー豆と向き合えるようになったことは言うまでもありません。好きなエスプレッソを除外したことは、悔しかったしむなしさもあります。しかし、勇気をもって遠くから自分を俯瞰すると、自分自身にアドバイスができます。私は、細分化された何か一つの分野で飛びぬけなければならない。それが自分にとって、焙煎だと教えられたのです。エスプレッソはまたいつか必要となったときに、選択肢として自分の目の前に現れてくるのでしょう。
まだよくわかんないスけど、自己実現や人生は、選択の結果がアルバムになったものだと思います。これからも、どんな悔いのない選択をつづけるのか、そんな自分自身とお店の姿が楽しみです。
Lover’s Coffee